地域で小さく商売を始めようとするとき、多くの人が一度は考えます。
「店舗を借りずに、住まいと兼ねてしまえないか」。
家賃が一つで済む。通勤がない。空き家を活かせるかもしれない。
理由を並べると良いことずくめに見えますが、
実際に相談を受けていると、メリット・デメリットを比べる前に
詰まっている人のほうが多いというのが実感です。
この記事は「店舗兼住宅は得か損か」という比較の話ではなく、
比べる前に自分の状況を整理しておく4つの軸の話です。
なぜ「メリット・デメリット」から入ると決まらないのか
店舗兼住宅を調べると、たいてい「家賃が節約できる」「通勤がない」といった
メリットと、「公私の区別がつきにくい」「来客が生活空間に入る」といった
デメリットが並んで出てきます。
これ自体は間違っていません。ただ、この比較には抜けている前提があります。
メリット・デメリットの重みは、業種と暮らし方によって逆転するという前提です。
来客がほとんどないオンライン中心の仕事なら、
「来客が生活空間に入る」はデメリットとして働きません。
逆に、飲食店のように毎日不特定多数が出入りする業態では、
同じ項目が大きなデメリットになります。
一般的なメリット・デメリットの一覧は、自分の場合にどちらが重いかまでは教えてくれません。
そこで必要なのが、自分の状況に当てはめて考える軸です。
決める前に整理する4つの軸
軸1:生活動線と来客動線が重なっても平気か
店舗兼住宅でいちばん実感として大きいのが、この動線の問題です。
玄関、水回り、駐車スペースを、家族の生活と来客が同じ経路で使うことになるかどうか。
同じ建物でも、生活部分と店舗部分の出入り口を分けられる間取りなら、
動線が重なる度合いはかなり下がります。逆に、玄関が一つしかない物件では、
来客のたびに生活の様子が見えてしまう状態が続きます。
先に確認すること:候補の物件(または今の自宅)で、生活動線と来客動線を
紙に書いて重ねてみる。重なる場所が多いほど、負担は営業時間中ずっと続きます。
軸2:事業の性質が「見せる」か「見せない」か
店舗兼住宅が向くかどうかは、業種そのものより「その仕事を人に見せる必要があるか」で変わります。
物販や飲食のように、店構えや看板で存在を知らせ、
通りがかりの人にも来てほしい業種は、住宅の外観のまま店舗を名乗ることに無理が出やすくなります。
一方、予約制の教室や相談業のように、来る人があらかじめ場所を知っている業種は、
外観を大きく変えなくても成立します。
先に確認すること:自分の事業が「通りすがりに見つけてもらう」ことを前提にしているか、
「知っている人だけが訪れる」ことを前提にしているかを言葉にしておく。
軸3:資金の調達方法をどちらで考えるか
住まいとしての資金計画と、事業としての資金計画は、金融機関にとって別の扱いになることがあります。
兼用の割合や使い方によって、住宅ローンの対象になるか、事業用の融資として扱われるかが変わってくるため、
具体的な条件は物件と金融機関ごとに異なり、この記事では断定できません。
先に確認すること:物件を決める前に、利用予定の金融機関や日本政策金融公庫の窓口に、
兼用の使い方を伝えたうえで、どちらの扱いになるかを確認しておく。
決めてから確認すると、資金計画をやり直すことになりかねません。
軸4:将来、規模や住まいが変わったときにどうするか
商売が育って人を雇う規模になったとき、家族が増えて住まいの広さが足りなくなったとき、
店舗兼住宅は「増築するか」「どちらかを外に出すか」の判断を迫られます。
始める時点でこの先の展開まで決め切る必要はありません。
ただ、兼ねる形をいつまで続けるつもりかを一度考えておくと、
物件選びの段階で「拡張の余地があるか」を見る基準になります。
先に確認すること:3年後・5年後に事業の規模や家族構成が変わったとき、
今の物件のままで対応できそうか、それとも見直しが前提かを、ざっくりでよいので考えておく。
兼ねると決めたときに、次にやること
4つの軸を確認して「兼ねる」に近いと感じたら、次は物件そのものの話になります。
今住んでいる家を使うのか、空き家・空き店舗を探すのかで、
確認する順番も変わってきます。
空き家・空き店舗を活用する場合は、探し始める前に
空き家・空き店舗が「使える場所」になる前に詰まる5か所
で整理した、相続・荷物・改修費・所有者調整・収益性の5か所を先に確認しておくと、
後戻りが少なくなります。
「仕事場のある家」でできること・できないこと
No Work Lab には、住まいと仕事場を一緒に考える相談窓口として
「仕事場のある家」という事業があります。
兼ねるか分けるかで迷っている段階から相談を受け、
やりたい商売と暮らし方を聞いたうえで、対応できる提携先へおつなぎしています。
はっきりさせておきたいのは、No Work Lab 自身は建築・不動産仲介・
売買や賃貸の契約を行わないということです。 設計や施工、契約の実務は、
提携する専門事業者が担当します。資金計画や税務の助言も行いません。
No Work Lab ができるのは、上の4つの軸のどこがまだ決まっていないかを一緒に整理し、
必要な相談先につなぐところまでです。
この記事のまとめ
店舗兼住宅は、一般的なメリット・デメリットの一覧だけでは決められません。
先に整理するのは、次の4つの軸です。
- 生活動線と来客動線が重なっても平気か
- 事業の性質が「見せる」か「見せない」か
- 資金の調達方法をどちらで考えるか
- 将来、規模や住まいが変わったときにどうするか
自分の場合はどちらに近いか分からない、あるいは住まいと仕事場を一緒に考える相談をしたいときは、
お問い合わせから相談を受け付けています。